…そこは最近急成長を遂げているとある出版社だった。
そこの新創刊の雑誌の印刷取引の件での契約話だった。


「どうもお待たせしました。わざわざご苦労様です。」

狸親父という言葉がぴったりの丸々と太った鳥山と名乗る担当者が接待部屋に入ってきた。


秋だというのに首にタオルを巻き汗を拭きながら二人を一瞥する。
已之吉と新太郎は頭を下げて彼を出迎えた。




…已之吉の勤め先の印刷会社は最近、米国より最新の印刷機を導入した。

それは従来の印刷技術の二倍・三倍以上に効率がよく、また質をも上回っていた。



それを宣伝文句に已之吉達は営業を続けた。


また鉄道貨物駅が隣接しており、運送費のコスト削減も図れ、それはかなり早い段階から全国に出版物が出回れる事を意味していた。



鳥山もその話に興味をもち、資料を見比べたりしながらとんとん拍子に話は進んでいった…。





だが…





名刺交換をする段になったその時、突如話が暗転する…。