それから2日後…。







已之吉は意識を取り戻した。


「…大丈夫ですか?心配しましたよ。あなた、なかなか目を覚まさないから」


一人の女性が彼の顔を覗き込んでいた。


「こ、ここは…。私は一体」
「私の家です。びっくりしましたよ…。あんな雪の中、あなた倒れていたから。」



「そうか…。わたしは」
彼はそれまでの情景を思い出していた。


いつも通り山に入っていっていきなり天気が変わって。
大雪の中さまよい歩いて…。
茂七さんが地面に吸い込まれて…。



…茂七。

茂七さん…。茂七さんは!


彼は布団から飛び起きた。

「どうしました?」


「あ、あの!あの!」
「ダメですよ。まだ寝てなきゃ。」
「茂七さんは!?」


「…え?」


「私と一緒に男性が倒れていませんでしたか!?」


女性は手拭いを絞りながら怪訝な顔をしつつ已之吉を見つめた。
「い、いえ。あなただけでしたが…」
「そうですか…。」


彼は再び布団に横になった。
茂七さんは…。


生きているのか?
それとも…。






…已之吉を助けた女性、彼女は「おしん」と名乗った。


色白のほっそりとした美しい女性だった。


彼女は誠心誠意、已之吉を看病した。


已之吉はほぼ全身に凍傷を受けていたが、彼女が傷に触れるとなぜかみるみる消えていく。


また、彼女が作る料理は絶品で話をしていても笑いが絶えず、また彼女の笑顔は惹き付けられる何かがあった。

そんなおしんに已之吉が好意を抱くのも時間の問題だった。




彼は瀕死の重傷を負っていたが、おしんの看病の甲斐もあってか完全に回復した。




「天気の良い日に送りますね。」


そんなおしんの言葉に、已之吉は
(いつまでも晴れないでほしい…)


そんなことを心の片隅に思っていた…。


已之吉のそんな願いが通じたのか、雪はなかなか降り止まず、おしんの言う晴れた日…
それは更に一週間も後のこととなる…。