「おきぬちゃん、いつも悪いねぇ。」




トミは、おきぬの持ってきたザルを受け取りながら言った。

「いいんですよ。気にしないでください。」


おきぬは笑顔で応えた。

ザルの中には川で捕れた川魚が入っている。彼女は定期的にその収穫物をおしんの家に届けていた。

「あれ、お姉たちはいないんですか?」



「おしんとあの子たちは今、村の共同管理の馬小屋の整理をしているよ。
…もう二時か。もう少しで帰ってくるんじゃないか」
「そうなんですか。お馬さん可愛いですもんね!あたし、あの澄んだ目が好きなんですぅ♪」
目をキラキラさせておきぬはつぶやいた。


「あはは。そうかぃ。まあてはいらも大事な働き手だからね。みんなで大事にしてやってるんさ。」

トミはそう言うと
「さてと」とザルを居間に持っていく。



「それじゃあ、あたしはこれで失礼しますね!」
居間に入るトミにおきぬは声をかけた。


「あ、おきぬちゃん。
ちょっと待ちな。」

トミは襖から顔を出した。
「こいつら早速、塩焼きにして食おうじゃないか?」
「え、あたしも食べていいんですか!」
再びおきぬは目を輝かせた。


「もちろんさ。たまにはこっちもご馳走せにゃね…。さぁさ、お上がり。」

トミはそう言うとおきぬを手招きした。。

「お、おじゃましますっ!」



おきぬは嬉々として已之吉の家に上がり込んだ。