「おきぬお姉ちゃん!もう一回見せてよ~!」
好子と健太郎はおきぬのアヤトリを夢中でみていた。

「いいよ。よく見ててね。ここを折って、そしてここを引くと、ほらできた!可愛いうさぎさんの出来上がり!」
「すごーぃ。」
好子は感嘆の声をあげた。
「お姉ちゃん、次はぼくだよぼくー。めんこしようよ!」
「ダメだよぉ。まだあたいがお姉ちゃんと遊ぶの~」


「さぁ、もう遅いんだし、お前たちは寝なさい。」

…已之吉が二人の子供に声をかける。




「えー、まだお姉ちゃんと遊ぶのー」
「そうだよ。まだぼくあそんでないよぉ」


おきぬは二人を見つめた。「明日、またお姉ちゃん来るから…ネ?」


「えー、でもまだあそびたい~。お姉ちゃんつぎお手玉しようよぉ」

「姉ちゃんばかりずるいよぉ。次はぼくぅ」

「…オネンネしないとお姉ちゃんもう来ないかもねぇ。」
おきぬはそっぽを向いた。

「えー、やだぁ!」

「あそぼーよぉ!」

「ダメよ。おきぬお姉ちゃん、もうオネムだって。」


おしんは二人をなだめた。
「いいこにすれば明日、お姉ちゃんがもっと色々なお遊び教えてあげるよ。」


おきぬがそう言うと、
「ホント!」
…と二人は嬉しそうに笑った。

「それじゃあ寝るね。お休みなさい!」


「はい。おやすみー!」


おきぬは明るく声をかけた。

「それじゃあ、私、子供たち寝かしてくるね。」


おしんは已之吉に言うと階段を上がっていった。



「…それじゃあ、あたしもおいとまします…。」
おきぬは腰をあげた。



「あ、いつもありがとう。また明日、田植えの方よろしく頼むね。」
已之吉はおきぬを玄関まで見送る。


「お邪魔しましたー。」
「おやすみー。気をつけて帰ってね。」



一礼するとおきぬは屋敷を出る…。





「明日、あの子たちにけん玉買ってってあげよう。
喜んでくれるよね…。」


おきぬは一人笑い、暗い夜道を歩いていった…。