むかしむかし…。
武蔵の国に、茂七と已之吉という二人の樵が住んでいた…。
ある冬の日のこと…。
いつもの山で二人は仕事をしていたが、天候の不潤で突如、猛吹雪になった。
…村まで帰れなくなった二人は遭難してしまった。
ここまで天候が一変するのは長年に渡り樵を従事する茂七にとっても初めての事…。
甘かった。山を甘く見ていた。
…茂七の後悔をよそに更に吹雪は激しくなる。
とりあえず雪が止むまでと、彼らは近くの作業小屋まで引き上げることになった。
吹雪の中、ひたすら道なき道を進む二人。
「く、くそ。小屋にたどり着けん!お、おい。已之吉大丈夫か?」
「は、はい!それにしてもどうしましょう。このままでは二人とも…」
「とにかく、作業小屋まで戻るんだ。このままじっとしていても凍え死ぬだけだ。」
「し、しかし…」
その時である。
突如地面が揺れた。
「う、うわーっ!」
茂七の体が暗闇に消えた。
地面に吸い込まれるように…
「も、茂七さん!」
駆け寄ろうとしたその時、
ズボ!
彼の足が「なにか」にはまった。
「なっ…」
ドドド!
同時に雪が大きくなだれおちた。
…雪庇である。
大雪は崖の精製をも隠していたのだ。
雪の塊と共に二人は深い谷へと転がり落ちていった…。