「おしんさんとおきぬちゃんは本当によく働くねぇ。」


米屋の親父はにこやかにそう語りかけるとウンウンとうなずいた。


「いぇ、これも私たちの仕事ですから…」
おしんは米俵を荷車から下ろしながら笑顔で応えた。「本当、楽しいですよね。わははは!」
おきぬはわざとデカイ声で笑った。



「でも無理しなくていいんだよ。女性なんだし。こんなん男のやる仕事だろ。」
「そんな…。私も楽しいからやってるんですよ。あ、積み降ろし終わりました。」
「お、そうかぃ。お疲れさん。んじゃこれ伝票な!」
「いつもありがとうございます。」

おしんは手拭いで汗を拭うと、笑顔で応えた。

「おう、また頼むよ!」


親父は事務所に引っ込んでいく。




「あ、あぢーぃよー。腰いでぇ~よお。」
おきぬは一人、馬にべたりとくっつきへばっていた。




「何よ。あれくらいの仕事でなさけない。」


「何であたしがこんなことやんなきゃいけないのよぉ~。」
「文句言わない。次は銀行に行ってお金もらいにいくわよ。」




「えー、帰ろうよぉ」
「お金もらってこなくちゃ、意味ないでしょー。銀行によるだけよ。」

おしんは馬の手綱を引きゆっくりと馬車を走らせた。