「あ、ホタル。」
「もう、お社様はすぐそこよ。おきぬこっちだよ。
いらっしゃい。」
おしんは無理に笑顔を作り、おきぬの手を引いて神社に案内した。
「わぁ、キレーイ!」
こんもりとした林に守られるように社はあるのだが、その中は光に包まれていた。
乱舞。
正にその言葉があてはまる見事さだった。
二人は境内に腰掛け様々な思い出話をした。
かくれんぼをして、おきぬが見つからず夜中に泣いて発見されたこと、雪の日に雪合戦をして唐笠小僧の傘を楯にしたこと、一反もめんに乗ってお伊勢様に行ったことなど…。
昔話は全く絶えなかった。
…楽しい思い出ばかりだ。
ホタルの乱舞。
それに包まれながらおしんは祈った。
来年も再来年も
十年後も、いや、ずっと永遠にこのホタルが見れますように。
何事もなく平穏に暮らせればそれでいい…。
家族みんなで仲良く暮らせれば…それでいい………。
ホタルの光はいつまでも華やかにそして明るく舞い続けていた……。