夜道を二人で歩いていく。

夏の虫がコロコロと…そして蛙がうるさいほどに鳴いている。



月明かりが辺りを照らし、星空が瞬いていた。





「お姉、幸せそうだね…。」
「うん…。」


しばらく無言の時が続く。


行く宛のないように二人は夜道を黙々と歩く…。


「好子ちゃんと健太郎くんも可愛いし…。」
「うん……。」



「お姉はさ、ずっと已之吉さんと暮らしていくつもりなの?」
下をうつむいたままおきぬは語りかける。


「私は…私はもちろんそうしていきたい。」
つぶやくようにおしんは答えた。

そして意を決したように顔をあげ、おきぬに問いかけた。




「おきぬ、本当はあなた私の事連れ戻しに来たんでしょ?」