「同じ空の下で…」


髪の毛をいつもより丁寧にブローする。

そして入念に肌のお手入れをして、化粧を施す。

少しばかり気合いを入れたワンピにジャケットを合わせ、
お気に入りのロングコートで身を包み、ストールを巻く。
今年買ったばかりのロングブーツに足を通して、
部屋の施錠を済ますと、
アパートの階段をリズムを刻むように降りた。

そして、待ち合わせ場所への道を歩く。

瞬と…デート。

イベント絡みじゃない。飲み会でもない。

紛れも無く、2人だけの待ち合わせ。


待ち合わせ場所への足取りは、浮かびそうな程に軽やかだった。

嬉しくて、楽しい気分♪

自然に笑顔になって足早に待ち合わせ場所に向かった。



待ち合わせ場所に着くと、瞬はまだ来ていなかった。

私のすぐ傍には、同じように誰かを待つ女の人が美しく綺麗な出で立ちでスマホを片手にして、時間を潰していた。

ベンチに座ると私も同じようにスマホを手にして今朝、コッソリと写した数枚の瞬の寝顔写真を眺めていた。

長いまつげを湛え、楽しい夢でもみているかのような顔で眠る瞬。
男の癖に愛くるしく、子供のようで…可愛い。
自然に私は優しい気持ちになれてしまう…。


「遅れました…。すいません…。」

頭上から聞き覚えのある声が聞こえ、私はそのまま顔を上げる。


「遅いぞ、瞬!」

「ごめんごめん、結構待った?」

「ううん、そんなでもない。」

「じゃ、行くか。」

「ん?どこに?」

「観たい映画あるんだ。一緒に観よう?」

「うん、いいよ。」

瞬の大きくて温かいその手に引かれて、ベンチから立ち上がると、私たちはその場を後にした。