そう言い、何度もフェイスラインをなぞり続けていたその手を私の顎先に添え、右後ろを向かせるように導くと
私と瞬の唇が、重なった。
ほんの少しのコーヒーのフレーバーと温かい瞬の唇の温度。
咄嗟に瞑っていた目を開眼させてしまった私は、瞬と目が合ってしまう。
瞬の瞳に自分が映るのを陶酔したかのように・・・・うっとりと見入っていた。
ふと、一瞬、唇が離れると眉間に皺を寄せながら悪戯に口角を上げて笑う瞬。
「眼、閉じないのかよ…。」
「・・・・そっちこそ・・・・。」
そう言い、ごく自然に目を細め笑いながら、目を互いに開けながらまた唇を重ねた。
それは、昔、悪戯にキスごっこをしていた子供みたいにじゃれあうようなキスで、その行為を恥じる事なく、それを普通に砂場で遊んでるような楽しい遊戯をしているような錯覚に陥った。
じゃれあい、唇を重ね、唇を触れ合わせながら互いに笑顔で笑いあう。
ああ、何でこんな事になってるんだろう・・・・。
私、こいつ大嫌いだったのに・・・・。
だけど、すごく幸せだった私は、瞬に完敗だった─────。
「幸せっ!」
そう言ってじゃれあいながら何度も後ろから抱きしめられて、瞬が可愛くて仕方ない自分が居た。
海原を背に私は瞬の方に向き直すと瞬の大きな瞳をまっすぐに見つめた。
どちらともなく、目を閉じ顔を傾けるとさっきまでのじゃれあいとは違うキスをする。
私の背中に手を回し、きつく抱きしめる瞬。
それに応える様に、瞬の肩に向けて自らの腕を回し、背伸びをする。
その時の私達に言葉なんて必要無かった。
