「…うん。」
「ここに来て、これを見ると気が付けば…悩みなんて、すっ飛んでて、…不思議だよな。…この景色は何も言わないのに、俺に元気と勇気を与えてくれる…。」
「…うん。」
「だから・・・・、艶香に今日、見せたかった。朝早くからごめんな…。」
「・・・・ううん、ありがとう・・・・。今、私、凄く幸せな…気分になってる・・・・不思議だね・・・・。」
そう言うと、また目を閉じた。
さっきまでのあの怒りに満ちた自分は全くそこには居なくて、ただただ景色の美しさに涙した自分が居る。
どうやってこの気持ちを表したらいいのか分からない私は無言でその景色に酷く心を打たれていて、自分が今、瞬に何をされているかも全く気にならなかった。
相変わらず瞬は私の後ろから、私を抱きしめフェイスラインを大きな手で何度も何度も撫でていた。
「艶香が…幸せな気分になってくれたなら、良かった・・・・。」
少しだけ当たる瞬の髪の毛と囁くような声。
首筋がちょっとだけくすぐったい。
「こんな・・・・気持ち、初めてだよ…。ほんとに…不思議。」
「・・・・俺も幸せになってもいいのかな?」
「・・・・幸せになる権利は誰にだってあるんだよ…。」
「・・・・そうだな。」
