「同じ空の下で…」


静かに、そして穏やかに空が明るくなっていく。
その光景は酷く暑い日の夕暮にも似ていた。

目の前の島に一瞬、閃光が走り、途端に明るさを増すと、地平線から太陽が顔を覗かせ、一斉に鳥が羽ばたいていった。

やや丸みを帯びたその島を背景に、煌々とした橙色の太陽が静かに地平線から顔を覗かせていき朝を告げながら島を照らしていく。

今までに見た事のない様な景色だった。


ほんの数分のその情景に私は完全に虜になっていて、
全く周りを気にせずに、その景色の美しさに、目頭が熱くなるのを感じ、静かに目を閉じると頬を涙が伝った。

私は生まれて初めて、その景色の美しさに感動して涙したのだった。



「・・・・美しいものを見ると・・・・涙が出るって本当なんだね」


そう呟いたと同時に、私の背中がふんわりと暖かくなり、瞬が後ろから温めてくれていたのが分かったけど、私は動けずに居た。

抵抗する…その行動すらも全く出来ないで、目の前の光景の虜となって居た。

「・・・・綺麗だよなぁ・・・・。」

低音で何かを擽るような鼻にかかった瞬の声が…耳元で聞こえる。

目を瞑り、私は頭をゆっくりと何度も頷いた。

ふと、頬を伝う涙を瞬が親指で拭い取ってくれた感触を感じると頭の動きを止め、静かに目を開けた。

何度も頬を撫でる瞬の、柔らかい指の感触をただただ感じながら、その情景に見入っていると、その指はしなやかに私の顔のラインをなぞるようにゆっくりと顎先に向かっていった。

「俺の宝物なんだ、この景色。」

何度も顔のラインを行き来しながら、瞬の言葉は続く。



「俺さぁ、自分が凹むとよく、ここに来るんだ。勿論、天気が悪かったりしたら、こんなに綺麗に見る事は出来ない。見ているうちに・・・・自分の小ささに気が付いて、凹んでる自分が馬鹿らしくなる…。」