帰りの車の中では、逢った時のような不穏で落ち着かない雰囲気は全く感じず、ごく普通に、友達と会話するかのように冗談まじりに話をした。

こんな時の高梨は、ごく普通の、ありふれた男なのだ。

ちょっと容姿が人並より長けているだけ。

人目を惹く容姿と顔だちなだけなのだ。


自分の部屋の近くまで来ると

「…ここで、構いません。」

と、車を停めて貰った。

素直にそれに従う、高梨はハザードを点滅させ、素早く運転席を降り、道路側に廻ると、助手席のドアを開けた。

その行動に思わずクスッと笑ってしまう。

「…なんですか?」

「いいえ…。ちょっと面白くて…。」

「僕が?」

「はい。…なんか、エスコートして頂いてるのは分かるのですが…そうゆうのに慣れてなくて、私、子供みたいだなって。子ども扱いをうけてる気分になって笑ってしまいました。ごめんなさい。」

「…不快な思いをされましたか?」

「ううん、高梨さんは立派に紳士的な振る舞いをして頂いてます。今日は本当にありがとうございました。大切にされてる気分を味わえて、そしてお仕事のお話もとても楽しく、勉強になりました。」

「それは、良かった。では、また、次にお会いできる時まで。」

「はい。お休みなさい。それと…ご馳走様でした。」

「おやすみなさい。良い、夢を…」