「同じ空の下で…」


自然と笑顔になって、高梨の話を身を乗り出すように聞いている自分に気が付いたのは、傍にある飲料水のコップに自分の腕がぶつかったのがタイミングだった。

高梨がやたら目を輝かせて仕事の話をするもんだから、つい…と、密かに彼のせいにして、私は姿勢を正し、その飲料水に口をつけた。


コース料理を嗜みながら、ゆったりと時間が過ぎて行く。

前に会食に同席した時(と、いうか、アレは完全にお見合いですが認めたくない)もだったけど、高梨と居ると何故にこんなにゆったりと時間が過ぎて行くというのに、時が経つのが早く感じるのだろう…と思う。

その答えは簡単で、私自身が楽しさを感じているから。

だけど、自分の左の薬指に目を落とし、その楽しむ自分に喝を入れる。

ドルチェを嗜むと、

「今日は、ありがとうございました。そろそろ…リミットが…」

「ああ、そうか。旦那様が心配しますね。」

「はい。貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。」

そう言って、帰り支度を始めた。

高梨は笑みを湛え、

「いいえ、こちらこそ。気づかずに申し訳なかった。」

と、店員を席まで呼び何かを耳打ちして、椅子から立ち上がった。

私も、同じように、席を立つ…。