トリップしかかっていた私の脳裏には、さっきの刺激的且つ、癒される光景がいつまでも頭に焼き付いている。
高梨のご来店に、受付に居たギャルソンエプロンを掛けた男性が、軽く会釈をして、席まで案内をしてくれた。
店内からは先ほどの庭が程よく見えて、一等席なんだなということがすぐに分かる。
「お食事は、僕に任せて頂いても?」
高梨の問いかけに、やっと我に返った私は、
「…は、はい。お任せ致します!」
と、慌てて返事を返した。
子供を見るような優しさに溢れる高梨の笑顔を見届け、また、庭園へと目を向けた。
そうだ、きっと、今、現実の中に居るんじゃない。
夢の中とか、非現実に私はトリップしているんだ…。
そう思わせる光景に、すっかりと見入っていた。
さっきの感情は嘘じゃない。
きっと、高梨にこんなもてなしを受けた世の女性は、彼に好意を持たずにはいられない事だろう。
出会いのタイミングがほんの少しでも狂って居たら、私は高梨と恋に落ちていただろう…。
前菜が運ばれてくる間、私は高梨への尊敬の念も込めて、この光景に感動を覚えた事や、高梨の実力について彼を誉め過ぎる程、褒めた。純粋に、ここに感動した事を伝えた。
すると、引き出されるように、高梨はビジネスに関する話を熱心に話し出して、これから始まるプロジェクトに対する熱意やら情熱やらを熱心に話し出した。
その話を聞いてるのがとても楽しくて、夢中になって高梨の話を聞いていた。
瞬は、一切、仕事の話など私にしてこないから、この事が妙に新鮮で面白かったのだ。
