高梨の車は、その前に停車し、エスコートされるように、彼が助手席に素早く周り、ドアを開ける。
「お待たせしました。」
高梨が見せる笑顔も、イルミネーションに彩られ、時折見せる鋭さを湛えたその瞳は、今日、今に限っては別人のように優しさに溢れて、いつか見せた寂しい瞳にも見えなくもない。
その瞳に、虹色が反射して、瞳がやたら輝いて見えた。
「ありがとう、ございます。」
差し出された手に、軽く右手を乗せ、おとぎ話の中のヒロイン気分になってしまった私は、静かに高梨の助手席から降りて、その光の世界に降り立った。
ドアを閉め、私の横に並ぶ高梨は、呟くように言う。
「ここは、僕が、最初に受け持った仕事です。」
「えっ?」
「…自分で営業に歩き、コネや父の伝手もなく、自分で掴んだ顧客に、自分の設計を提案し、形にした…実質の僕の最初の仕事なんです。」
「へぇ~!!…なんか…絵本の世界とか…御伽の国とか…非現実的な場所にトリップしたような…」
それでいて、癒しを感じるのは、水流が程よく色を変え、雨音にも似た滴のせせらぎのような音が、私にヒーリング効果を与えてくれているからなのかもしれない。
「…では、行きましょう。」
軽く背に手を添えられて、その場から離れがたい気持ちを残しながら、傍にある建物へと、高梨に連れられるままに、足を運んだ。
