常務が、私に…高梨への用を言いつけなければ、ここに居る高梨とも、ずっと他人のままだったのかもしれない。
お見合いじみた食事会への同席を断れば、こんな展開って、なかったかもしれない。
「…私も…心のどこかで、そう思ったかもしれません。高梨さんに、准一さんに、もっと早く出会っていれば、もしかして…」
"アナタト コイ ニ オチテイタカモ シレナイ"
「…出会いのタイミングって、大切ですね。」
「はい、私も、そう思います…。」
その後、少しだけ沈黙が続いた。
「…これからは、ビジネスの方でお世話になります。宜しくお願いします、岡崎さん。岡崎艶香さん。」
「いえいえ、…こちらこそ、宜しくお願いします。ご迷惑をお掛けしませんよう、尽力を尽くします…。」
…・・・・────
高梨の車は、静かに国道沿いから抜け、少し狭い道へと差し掛かって、右折した。
少し遠目から見ても、そこははっきりと見える。
碧いイルミネーションに彩られた木々と、虹色に光を放ちながら、その噴水は姿を七変化させていた。
とっぷりと辺りは闇に包まれていて、光が織りなす魔法のようなその光景から、私は目を離せずに居た。
