「同じ空の下で…」


そんな風に思われているなんて、正直、心外だった。

顔が真っ赤になっているのが自分でもよく分かる。

思わず俯いて、自分の足元を見ているのが精一杯だった。

まともに、高梨の顔を見る事なんて、もっての他だった。



「もっと、早く艶香さんに出会いたかった。」





出会いと結婚なんてタイミングに過ぎないと、何かの書物で読んだ事がある。

思えば、瞬との出会いを遡れば、ほんの些細なタイミングが重なっただけで、私と瞬の出会いは必然だったのか偶然だったのかなんて全く分からない変な出会いだった。

あの時、由美から電話が来なければ、タケルや瞬の存在を知る事は無かっただろう。

あの時、瞬が私の電話と自分の電話を間違って取らなければ、亮太との生活が今もあったかもしれないだろう。

あの時、タケルがパソコンのデータを飛ばす事が無ければ、私と瞬が手伝ったりしなければ、瞬と朝陽を見る事は無かったのかも知れない。

新しい自分に出会う事が無かったかもしれない。


あの時、もう会わないようにしようと言った瞬と、そのまま距離を置いたままなら、今の私は…今頃私は…。

きっと、なんの刺激もない、繰り返して変わらない日々を送って居た事だろう。