「同じ空の下で…」


暮れかかる西日が、高梨の横顔を映し出していて、眩しすぎて、思わず私は目を細めた。

「…繰り返して変わらない、つまらない日々の生活の中、艶香さんは僕のオアシスでした。…こんな僕に、恋愛感情を教えてくれて、ありがとう。村越さんの会社に行くのが、本当に楽しみで仕方なかった。…これからも、きっと貴社へ出向くのが楽しいと思うけど…今までの感情とはまた違った感情も…生まれるのかな…。」

そう話すと、少し照れを隠すような、はにかんだ笑顔を見せる高梨准一。

その横顔は、少年じみていて、専務だとか御曹司だとかの肩書きなんて全く見当たらない。

今私の目に映るのは、ただのありふれた一人の大人の男に過ぎない。

「…私は、そのようなお言葉を頂けるような、立派な人間ではありません…。」

「いいえ、僕には充分過ぎるほどの方です。…遠距離恋愛と聞いて、ちょっと自分にも見込みあるのかな…なんて、少し自意識過剰にもなってました。だけど、遠距離だろうが、近かろうが、貴女のぶれない思いというか、一途な程の感情には、やはり最初から僕の入る隙など無かったと…今頃になって反省してます。…外国と日本と言う、遠距離恋愛を成就させた貴方に益々惹かれてしまう…自分が居ます。」