「同じ空の下で…」


群青色で綺麗に手入れをされたピカピカの2シーターの車が目の前でハザードを点滅させた。

運転席の高梨が私の姿を見つけて私に笑いかけ降りてきた。

「お待たせしました。…どうぞ?」

エスコートするようにスマートに助手席を開ける高梨。

こんな風に扱われる事に慣れて居ない私は、ぎこちなく助手席に座る。

「失礼、します…。」

高梨がドアを閉めると、すぐに運転席に座る。

2人きりの空間である事を変に意識してしまった私の鼓動は急に速くなり、心臓の音が自分にドクンドクンと体全体に響いてきた。

「お食事…でいいかな?」

「…は、はい。」

至近距離で顔を覗き込まれ、私は益々緊張する。

頭の中は真っ白だった。


そんな私の感情をよそに、高梨の車は滑る様に走り出した。

「…指輪がまた変わりましたね。もしかして…?」

「は、はい。実は、入籍しました…。」

「それはそれは、随分、急でしたね。おめでとうございます。では、姓が変わったのかな?」

「はい…。岡崎 艶香に…。」

「オカザキ…?」

「はい。」

「もしかして…あの時の…」

「はい。㈱okazakiの…先日他界されました会長の孫にあたる岡崎瞬と入籍をしました。」

「…そ、それは、随分…急で…それは驚いた展開だな…。お、おめでとうございます。あの時は、もう既に…親族だった訳だ?」

「…ん、う…う、うん、まぁ…。」


そう突っ込まれて話をされると答えに詰まるが、しどろもどろながらに、私は答える。

「…なるほど…ねぇ。」

納得したのか否か…高梨は前を見据えながら答えた。