「同じ空の下で…」


身体にあたる風がどことなく冷たい…。

瞬のウエストに回し、きつく結んだ自らの両手は少しずつ熱を失っていった。

だけど、信号待ちに差し掛かり、お約束のように瞬は私の手に触れ、温めてくれるように、包み込んだ。

そして、導くように、瞬が今日着ているパーカーのお腹の所のポケットにさりげなく突っ込んでくれて、信号が青に変わると、また、爆音を響かせて風を切るように、バイクを走らせた。

本当に…このさりげない心遣いというか、優しさに包まれる事で瞬へのとてつもない想いがこみあげてきてしまうのだ。

ところで、一体、どこに向かっているのだろう…。


「着いたっと。」

エンジン音が切れたと共に、瞬がヘルメットを外して、呟いた。

私もヘルメットを外し、乱れた髪の毛を直しながらそびえたつ建物を見上げた。

赤土色の煉瓦造りの隠れ家のようなその建物。

ガーリックの香りが一瞬、私の鼻を横切った。

「…ここ、どこ?」

「ジェームスの知り合いのお店らしい。俺も初めて来たけど。」

瞬も、ココア色の髪の毛を軽く掻き上げて乱れを直し、バイクのミラー越しに私の問に答えた。

また改めて外壁を見上げてみていると、頬に当たる…瞬の唇の温度。

それに気が付いた時に、顔がカァッと熱くなるのを感じる。

「…っな、なにっ!?」

「俺、艶香の横顔好き。」

そう、さらりと言い、ヘルメットを私の手から奪うと、もう片方の手で手を引いて入り口に向かって歩き出した。