「そうか。」

私と高梨父のやり取りを静かに見守る…高梨准一。

「じゃ、失礼するよ。」

「すいません、お引き留め致しまして…」

「構わんよ。また食事でもしよう。」

「…では、失礼します。」

やっと口を開いた高梨准一。

その時やっと目が合った。


タケルは終始、その場に居合わせていたが、場の空気を読んでいたのか何も言わずに突っ立って居た。

そして、高梨親子の背中を見送り、やっと私に話しかけてきた。

「…もしや…例の御曹司?」

私は頷いた。

「…ぎこちない空気だと思った…。」

「…なぁ~んで、こんなトコで出くわすんだろ…。」

「故人との繫がりがあったからだろう?それだけ瞬の爺ちゃんは人脈があったって事だな。」

「そりゃ…そうだけど…さぁ?」


分かっている。そんな事分かっていると言うのに。

何か何処か引っかかるような、微妙な…心境だった。

英艶香の婚約者である岡崎瞬の御祖父ちゃんの告別式に居る、瞬のライバル、高梨准一・・・・。


「はっきり、『これからここの親族になるんです』って言えば良かったじゃん。」


タケルは、少し笑いを含むような言い方で言った。


「…それも…そうだ。…でもさ、私と瞬の関係は高梨は知らないから、多分…タケルが私の恋人とか…勘違いしてるんじゃないかな?」

私も笑いを含みながらタケルの顔を見上げた。