瞬に返すのを忘れていた小銭をバッグの中の巾着に押し込めて、窓の外の景色を眺める。
沢山考えなければいけない事があるというのに、ぼんやりと頭が空っぽになったかのような…魂の抜けた状態になって、流れゆく景色を見ていた。
アパートの前につき、支払を済ませて階段を昇り部屋に辿り着く。
いつもと違う光景に見えるのは、ほんの数時間前まで瞬がここに居た形跡が残っている事。
瞬の荷物、瞬の服、瞬の……気配というか、香りと言うか…空気がこの部屋に漂っていた。
エアコンのスイッチを入れ、ゴロンとベッドに仰向けになり暫く無になって天井を見つめた。
そして、時折、思い出したように薬指のリングを眺め、一人、ほんわかとにやけ顔になる。
幸福な気持ちになり、目を閉じ…ほんの束の間のつもりで、うたた寝をしてしまっていた。
♪~♪~♪
自らの電話の音で目を覚ました頃、すでに太陽は西の空の彼方に沈んでいこうとしていた。
慌てて飛び起きて、着信画面を見ると、タケルからだった。
「…も、もしもし?」
『ん?なんだ?寝起き?…今日は仕事じゃなかったの?』
私の寝起き声を、タケルは聞き逃さなかった。
