それ以上何も言わずに黙々と食事する瞬に、少しだけ物足りなさを感じた。
"…もっと突っ込んで聞いてくれたら、話しやすくなるのに…"
…恐らく、明らかに違和感を感じたのかもしれない。
瞬はその後も一切その話題に触れなかった。
ただ…、
今日は天気もいいので、バイクでお出かけしよう…───
そう言われて、カジュアルな格好に着替えて、瞬の助手席で大人しく座っていた。
私は私で、今朝方の電話の向こうの高梨の声を頭の中でリフレインさせていた。
『では、明日も用事を作って出向きましょう。』
…明日、会社で…高梨と会う。
疾しい気持ちで会うのではない。
…仕事で、会うんだ。
そう思いつつも、あの時のキスの感触だとかが…この唇が覚えてしまっていて…
昨日から与えられている瞬の優しいキスで上塗りされているはずだっていうのに…
やたら高梨のキスの感触が…
忘れられない。
瞬の助手席で宙を見据えながら…私は唇を尖らせた。
瞬の助手席に居るっていうのに、車から見える空を見上げ、なぜか切なくなっていた。
・・・・元気かな。
逢いたいなぁ…。
癖のようにして瞬の事を思うが、今傍にいるんだから、そう思う必要はないって言うのに…。
誰に対して「逢いたいなぁ…」なんて思ってしまってするのか…。
