「同じ空の下で…」


『おはよう。…今日は、どうしたんです?』

「…えっ?」

『村越さんと打ち合わせがあってお邪魔したら、艶香さんが居ないので…。あ、そうそう、メール見てくれました?』

「…あの、今日は有給休暇です。」

『昨日も、会社にいらっしゃらないと聞いたので…体調を悪くされたのかと…。』

「…メールの件も確認しました。」

心臓が、バクバクする。

これ以上ないって程、バクバクする。

人目を憚ってこうゆう事すると、本当に手が震えるんだって…分かった。

瞬の事をチラリと見ると、目が合ってしまって慌てて逸らした。

『メール…みたのなら…御返事下さい。』

「…ごめんなさい。夜、遅くだったものですから…。」

『…元気なら、それでいいです。』

「…はい。ご心配をおかけしました。」

『…いつ、出社されますか?』

「明日には…。」

『では、明日も用事を作って出向きましょう。』

「…は、はぁ…?」

『元気そうで、安心しました。忙しいトコ、申し訳ない。』

「いっ、いえっ!」

・・・・てか、そっちこそ、忙しいんじゃないのか…と私の中の悪魔がささやく。

『じゃ、良い休暇を。』

「…ありがとうございます。」

静かに通話が切れると、私は細くて長い溜息をついた。

瞬が、怪訝そうにこちらを見てる。

「会社?」

「…ううん、取引先の人だよ…。」

瞬の目線からおもむろに目を逸らし、高鳴る心臓を抑えるようにして、またサラダを口に含んだ。

パプリカのわずかな苦みが口一杯に拡がり、まるで、今の私の心の中を表現しているようだった。