「同じ空の下で…」


「要らなきゃ、後でどっかに捨てたらいいよ。とりあえず、捨てる前に開けてやってよ、こいつの為にも。」

包みを長い人差し指でつつく瞬。

躊躇いながらも、開けてみるとスワロフスキーで作られた子犬の携帯ストラップが出てきた。

「艶香のスマホ、なぁ~にも…ついてなくて、男の電話みたいなんだもん。それ着けてたら俺もこれから間違わなくて済むだろ?…ほんとに、あん時はごめんな。その後、何もなかった…?………訳ないよな。喧嘩しただろ?彼氏と。」



キラキラと照明に照らされる仔犬をみながら、私は無言で頭を縦に何度も頷いた。



「…だよなぁ。……ちゃんとその後、仲直りしたんだろ?」



今度は無言で何度も首を横にブンブンと振った。



「えっ?仲直りしてないの?!……じゃあ、…分かった、俺、土下座するよ、艶香の彼氏に。あ~あぁ…」



さっきまでの落ち着いた瞬とは対照的に、今度は落ち着きなさそうにあちこちを見渡し始めた。



そんな瞬を見て、私は意を決し、




「瞬が土下座する必要はないよ、私達、別れたから。」


そう言うと、静かにたばこを灰皿に置き、火を消した。