「普通の家の玄関じゃないよ…ここ…。」
「…おやじもじいちゃんも、見栄っ張りなだけだ。…さて、行くか。」
瞬は靴を履き直し、立ち上がると、また私の手を引いて歩き出した。
「はっ、はいっ!」
瞬に手を引かれ玄関ホールを出ると、瞬の車の助手席に座った。
久々の・・・・このシュチエーション…───。
瞬がハンドルを握ってる時の手の甲が好きで、私は少しだけ微笑んだ。
その姿をちゃっかりと見ていた瞬はまったく照れる様子も見せずに笑顔で私の顔を覗き込み、
「なぁに、一人で笑ってんだよ?」
と、ハンドルに腕を乗せて、そのまま頭を乗せる様にして私を見ていた。
「な、なんでもないよっ!」
「変な…顔っ!」
「痛いっ!」
私の頬を軽く抓り、ハンドルを持ち直すとアクセルと踏み、カーポートから車を出した。
ぼちぼちと街の灯りが灯りはじめる、午後7時。
薄暗いけど、まだ不気味に西の空は明るかった。
「すっかり…日が長くなったな。」
「うん、そうだね…」
「俺と艶香が出会った頃は、速攻で闇になってよな。」
「だって、あれは…あの頃は…冬じゃない。」
「そうだな。…今でも覚えてるな、あの艶香の…」
「…ん?」
「強気で勝気に俺を睨む顔。『ほっといてよ!!!』…って。」
