「…あ、じゃ、すぐ戻る。」
瞬は、階段を軽やかにかけ昇っていった。
瞬を待つ間、玄関ホールと呼ばれるその空間を眺めて居た。
白壁は、クロスを張ったような白ではなく、漆喰で塗られていて触るとひんやりと冷たさを感じた。
ゲストを迎えるに相応しいエントランス…ってやつなのだろうか。
センス良く生花が、和風に生けられているが、家との釣り合いをとっているのか、どこかモダンな雰囲気が漂ってる。
高梨と歩いた日本庭園の美しさにも勝るとも劣らない…。
此処はただの家族の帰る場所に過ぎないというのに…一般家庭の玄関とは思えない、凝りようだった。
さすが、ホテル経営者一家の自宅だ。
私は、とんでもない人の…『大事な人』になってしまった。
改めて、瞬の家系の凄さを実感する…。
やっぱり…私は…
瞬の彼女には、相応しく…ない。
悔しいけど、そう認めざるを得ない…。
……────
「お待たせっ。」
慌てて降りてきた瞬は、荷物を少し片づけたのか、小さなデイバッグを持って私の前に姿を現した。
「…やっぱり、瞬て…」
「…ん?」
「お金持ちの息子…なんだね。」
「なぁんだよ、急に…。」
