「オムライス、頂戴♪」
席に座る前に、さっさと店員さんに注文する瞬は……
とても涼しい顔をして、水の壁を眺めている。
「つやかは?何食べる?」
………アノ、マダ、メニュースラミテナイケド………ナニヲエラベト?
てか、席にすら着いてないんだけど。
「おう、瞬、いらっしゃい。空いてるとこ、座っていいよ。」
「じゃ、ここに座るか。」
と、瞬はすぐ傍にある席に座ると、私も続いてそこに座った。
「いらっしゃいませ。」
優しく微笑みながら、メニューを渡す浅黒い顔をしたお兄さんに、すかさず私も笑顔(作り笑顔)を返す。
何を食べたら良いかわからないメニューだらけだったので、仕方なく、瞬と同じ物を注文する。
「私もオムライスで。」
「かしこまりました♪」
とてもオムライスを出すような大衆食堂には見えないんだが、ほんとに、オムライスが出て来るのだろうか?
「疲れたな~」
瞬はネクタイを緩め、するすると外すと、テーブルに頬をつきながら私の顔を見て言った。
そう言えば、この人の顔をしっかり見た事が一度もなかったが、私を見る大きくてはっきりした二重の瞳には、キラキラと流れる水が映り、まるで子供のような汚れない瞳を見ているかのようで、
柄にもなく、瞬の目に映る水流にしばらく見とれてしまっていた。
「………口、開いてるぞ?つやか?」
その声で、やっと我に返り、慌てて姿勢を正す。
