「同じ空の下で…」


その場所から少し離れ、狭い路地を器用に抜け、少し人通りの多い通りに出ると、瞬はエンジンを止めた。


片足をつき、バイクの後部席から降り、窮屈なヘルメットを外す。

相変わらず捲れてしまうスカートの乱れを正しながら、私は辺りを見回した。

瞬は、バイクのミラーで自分の髪の毛を軽く整えると、そのまま、私の頭に手を添え、乱れを直すかのように、大きな手で撫でていた。

その動作があまりにも自然過ぎて、馴れ馴れしく頭を触られた事にすら気付かった。

「子供みたいな頭だな」

瞬の、鼻にかかった低音の声が自分の後頭部から聞こえて、やっと頭を撫でられた事に気づいて、慌てて頭を押さえた。
気付いた途端に、顔と耳が真っ赤になった。


「………!」


「さてと何食べようか、兄弟。」



おしゃれな外装のカフェの横にある地下への階段をゆっくりと降りながら、瞬はご機嫌そうに鼻歌なんか歌っていた。


瞬の後をついていき、瞬に続いてドアを開けるとそこはまるで異空間だった。


壁一面に張り巡らされた、ガラスからは滝のように水が絶えず流れている。

水族館か洞窟の中に迷い込んだかのようなソコは、耳障りが良いヒーリングミュージックが密かに流れ…あとは水が流れる音しか聞こえず、何だか気持ちが落ち着いた。

適度な照明が妙に心地よい。