会うよ、会えるに…決まってる。
むしろ、周りが見えなくなってしまうほどに、私は会いに行ってしまうのかもしれない。
故に『会ってくれる?』の台詞に、私は戸惑う。
「…会って…くれる…よ?」
小さな、自信の無い震えた声で…静かに応える。
その言葉の裏に、昨日の高梨との出来事が、まるで見透かされたような気がしてならなかった。
その心を隠すかのように、また私は言葉を続けたのだった。
「…ねぇ、瞬。なんで、そんな風に聞くの…?会うよ、会いたいのに。会ってくれる…なんて…聞かないでよ。」
少しだけ動揺しながら、声高に、更には少し震えた声になりながら話す。
そもそも、そんな言葉に拘って動揺してしまっている自分が一番情けない事にその時は気づかなかった。
「…何だよ、ムキになって。怒った?」
いつも通りの変わらない瞬の声のトーン。
「怒ってなんかない。」
ほんの少し俯き、ペディキュアの剥がれを見つめながら話す。
「…そうか?」
「そうよ、怒る理由が無い。」
「なかなか予想外の反応だったな。」
電話の向こうで、シュボッと音が聞こえ、瞬がお気に入りのジッポライターに火を点ける音が聞こえ、煙草を吸ってるんだと、すぐに分かった。
私は私で部屋に置いて行った瞬のジッポライターを見ていた。
