「同じ空の下で…」

「ご、ごめん……!」

「ほらまたっ!」

タケルは私を指さし、笑った。

「…あ、あああ、ありがとう。ご馳走様です。」

笑われたのをよそに、頭を下げながらお礼を言うと、変わらずの柔らかい笑顔を返してくれる、タケル。

「どういたしまして。」




私にとって…タケルという男友達の存在が、とても心強かった。

タケルが会計をしている間、スマホの画面をチェックしてみるが瞬からのメッセージは無かった。

小さな溜息をつく。

忙しいんだよ…きっと。

更には…御祖父さんの事で、凄く、落ち込んでるんだ。

私なんかを相手してる場合じゃないって…事だよ。

…自分に言い聞かせる。

だけど、仮に瞬が近くに居て落ち込んでいるんだったら、そっとしておくよりも何も言わずに傍に居てあげたいとも思うんだ。

もし、自分だったら、誰かに傍に居て欲しいって思うからだ。



…じゃ、私がもし、誰かに手を握ってほしい程の時の心情って?

その答は、単純で且つ、簡単だった。



″自分に自信が無くなって、不安になる時″だった。



その考えに辿りついた時にやっと、高梨の手の体温の原因が分かった気がして、一気に頭の中が晴れていったのだった。


「おまたせ。どした、艶香、ニヤニヤして…。」

「ううん、何でもない。」

私とタケルは、少し賑やかな大通りの雑踏に紛れるようにして、その場を後にした。