高梨の手の体温は尋常でなかった気がした。
その証拠に、手を離した時に自らの手には、手汗を掻いていた。
一体、どんな記憶が蘇ってきて、通常なら自意識過剰な彼をあんなにまで興ざめる程の心情にさせてしまったのか…?
相変わらず、そんな余計な事が気になって居た。
緊張。
恐怖。
怯え。
思い出したくない…過去。
一日経ったというのに、相変わらずその事は気になって仕方なかった。
「今日は?瞬との約束はないの?」
煙草をもみ消しながら、タケルは私に問う。
「連絡来たら、電話しようと思ってた。」
「そか。…なんかあったら、遠慮なく言えよ?今日の話しをきいたら、何だか…危なっかしいな、艶香。」
「大丈夫だよ。何かあったら、ちゃんと…言う。」
「ん。それで良し。さて…退散すっか。」
一つ伸びをしたタケルは、両手を伸ばしながら体を左右に動かし、更には首を左右に曲げてコキコキと音を鳴らした後、ゆっくりと立ち上がりレジに向かった。
「タケル、はい、コレ。」
「いらない。…こんな時に恥かかせんな。奢りだ。」
「…い、いつも、ごめん。」
「ごめん?ごめんよりも言う事あるだろ?艶香の口癖だな、『ごめん』」
