「同じ空の下で…」


黒塗りの高級感溢れる車が目の前に停まっている。

「艶香さん、お先にどうぞ。」

開け放たれた後部席のドアの前で、雨に濡れながら高梨は私が先に乗る様に促した。

「あ、はい。」

何の躊躇いもなく、私は先に乗り込む。

レディーファーストってやつだろうか。

私が座るとその横に高梨が乗り込んだ。

運転手が、静かに後部席のドアを閉め、雨に打たれながら急いで運転席にのりこんだ。

店の前に目をうつせば、5~6人の和服の女性がお見送りをするかのように整列してその車を見送っていた。

これほどのもてなしを受ける価値がある、横に居る高梨准一。

彼の大きさというか、存在の重さを目の当たりにした。

車内では、車の屋根をたたきつける雨音と、ワイパーが忙しく稼働している音だけが、響き渡る。

私は、窓の外の景色をただ無心で見つめていた。

「艶香さん、今日は、本当にありがとう。」

高梨の声で、やっとの事で我に返る。

慌てて高梨の顔を見返す。

「こちらこそありがとうございました。」

「その指輪は、彼から頂いたものですか?」

高梨が私の左の薬指を見ながら言った。

癖のようになって居て、いつも肌身離さずに欠かす事無くはめている、瞬からもらった指輪。

そっと右の手で撫でると思わず顔が綻ぶ。

「はい。誕生日に頂きました。」