急に、私の右手が人肌の温もりに包まれる。
私の右手を包み込むその手は少しだけ小刻みに震えていた。
咄嗟に手を退けようとしながら、高梨の顔をみると、ちょっとだけ緊張気味の様な、もしくは恐怖感にさいなまれるような…少し強張った余裕のない表情をしていて、退けようとしていた手の力が緩んだ。
「…少しだけこうさせて下さい…。」
情けないくらい、小さな声でつぶやく高梨。
返事も返す余裕も無く、頷く余裕もなく、無言で高梨の顔をみて、目で納得すると、また空に目線を移し、雨粒を見ていた。
震えるその手に、尋常なく力が込められて、思わず私も強く握り返していた。
「大丈夫です。すぐにおさまります、通り雨ですよ、きっと。」
私は強気に振る舞った。
高梨の手は、少しだけ温度が高くなって、本当に雷と雨というのが、彼の中の嫌な記憶を蘇らせているんだろうと思った。
静かに気づかれないように、彼の顔をまた見上げると、無理に目を閉じ眉間に皺を寄せ何かをかき消すような表情をしていた。
…一体、どんな記憶が蘇ってきて、彼を苦しめているのだろうか?
…と、少しだけ高梨准一に興味が湧いたのだった。
相変わらず容赦無く雨脚は強まっていった。
