しばらくの間、二人で過ごすには勿体ないくらいの広さと日本という国を象徴する全ての物を携えた、高級感溢れるその空間は、静けさ一色になり、時折、池の音や獅子脅しの音やらが微かに聞こえた。
「…では、恋愛感情を抜きに、貴方とお付き合いを始めさせて下さい。」
重い空気をなだめるような、心地よいトーンの高梨准一の声。
「…はい。それなら…。」
俯いたまま、彼の表情を見ずに、私は答えた。
何だか複雑な心境に陥っていた。
「…座り疲れました…。せっかくなので、庭園を散歩しませんか?まだ、時間の余裕はあるはずですよね…?」
高梨は、自らの左腕を確認し、小さく「大丈夫だな」と呟くと立ち上がった。
私も、座り慣れていないせいか、少し足を崩したい気持ちもあり、同じようにその場所に立ち上がった。
さっきから、私たちの居る部屋へ出入りを繰り返していた和服を着た女性に一声かけると、すぐに私と高梨の履物を用意してくれた。
用意された履物を履き、少しだけ背伸びをして空気を吸い込む。
その私の横で高梨も同じように伸びをする。
「堅苦しいのは苦手。そろそろ普通に会話しましょう。」
伸びをしたままの体勢で、高梨は私の前を歩き始めた。
その後ろを私もゆっくりと付いて行った。
