「同じ空の下で…」


目をこらして良く見てみれば、彼の顔の頬のあたりが、ほんのりと紅潮しているようにも見える。

そのタイミングでなのか否か、高梨准一は右手を自分の首のあたりに宛がうと軽くネクタイを緩めた。

「ふぅ…。」

ほんのり桃色に紅潮している頬を軽く膨らませて小さな溜息を漏らす。

男性にも色気という物があるんだなぁと、私は私で未だかつて感じた事のないような感情を抱きながら、高梨准一から目を逸らすとお膳の中に置かれた汁椀に手を伸ばした。

隣に居る常務とその向かい側に居る高梨父を横目でチラリと見てみればいつの間にやら冷酒グラスを片手に酒盛りが始まっていた。

無言で汁椀の中のふわふわとした真薯(しんじょ)の上にあんかけが掛けられたものをついばむように食す。

口の中でとろけるような感触に、思わず舌鼓を打ってしまう。

久しく高級な和食など…縁がなかった。

そういった意味では今日、ここに来て良かったなぁなんて思ってしまう。


「すっかり准一も艶香ちゃんも打ち解けたようだし、我々は退散しましょうか。」


ここには時計がなく、更には時間の流れを感じさせないような造りになって居た為、正確な時間がよく分からなかったが、…会食が始まって1時間半くらいは経過したような気がした時の事。

すっかりほろ酔い気味の高梨父が、雰囲気を裂くように言った。