その思想をかき消すように、一気にグラスの中のワインを飲み干した。
「お気に召しましたか?」
「美味しかったです。」
「わざわざ北海道から取り寄せて貰った甲斐があったな。」
「そ、そうなんですか?!」
驚いて声のトーンが高くなってしまった私に、高梨父は優しく微笑んだ。
慌てて私も(心の内は別として)、微笑みを返した。
しばらく、常務と高梨父の談笑に相槌を打ったりしながら、その場を取り繕うかのようにして話に耳を傾ける。
2人だけで盛り上がったタイミングで時々料理に箸を伸ばし、滅多に口に出来ない割烹料理とやらを嗜んだ。
『かぶらの柚子味噌風』に箸を伸ばした時、
「艶香さん。」
と、突然に高梨准一に呼ばれ、驚いて彼の顔を見上げた。
「な、なんでしょう…?」
「…と、お呼びしても宜しいですか?」
「…ええ、構いませんが…。」
「艶香さんの、ご趣味は?」
……趣味?
「あの…特には…。じゃあ、高梨さんは?」
「准一でいいです。」
「…は、はい。…じゃあ、准一さんは?」
「決まって趣味など無いですが、収集癖があって、コレクションしてるものがあるんです。」
「へえ!何を集めてらっしゃるんですか?」
「ありきたりですが…チープな値段のどこにでもあるような…フィギアを。」
「あの…オマケとかについてるような?」
「そう。ミニチュアなタイプの。フィギアって言っても…誤解しないで下さいね?」
慌てて否定している高梨准一は、珍しく落ち着きさがなく可笑しくてその様子に自然と笑いが出てしまう。
「慌てて否定しなくても大丈夫ですよ。」
いつもやけに落ち着いてクールな高梨をこんな風に乱しているのは、もしかしたらさっきの苺ワインが一役かってるのかもしれない。
