どう考えたって完全に浮いてる私(さらには言葉に出さずにさっきから心の声ばかりを発している私)をよそに、知らぬ間に小さなショットグラスのような物に入った美しい桃色の液体の飲み物が運ばれてきていた。
「乾杯をするとしよう!」
常務がそのグラスを取り、目線より少し上に上げた。
すかさず、私も同じようにグラスを手に取り、その仕草を真似る。
4人のグラスが揃うと、高梨父が口を開く。
「今日という佳き日に…乾杯!」
カチンッ
美しい音色とも言える音が、手入れが行き届いたその部屋に響いた。
慣れない手付きで、高梨准一とグラスを合わせる。
「今日は宜しくお願いします。」
静かに笑みを湛える高梨准一。
前に見た時とは違った、スーツ姿がやけに新鮮に目に映る。
グラスに口をつけると、控え目な甘さが口一杯に拡がった。
それは苺ワインだった。
文句なしに美味しい。
今まで飲んだ事のない美味しさだった。ワイン独特の渋みとか苦味とか一切なくて、カクテルを嗜むような…いかにも食前酒のような…何とも言えない美味しさだった。
唇を離し、グラス越しに桃色を覗いてみると、向こう側には高梨准一が映る。
女子社員に多大な人気があるというイケメン専務だというのに、何だってお見合いなんて必要なのだろう…。
言い寄ってくる女性なんて沢山いるだろうに…。
あ、造られた女は嫌いなんだっけ…、この人。
…ま、どうでもいいけど…早く終わってくれないかな…。
この状況を一人歓迎出来ない私は、捻くれた思想がどんどん湧き出して来る。
