「同じ空の下で…」


勿論、セレブ高梨と一緒に現れた品のいい男性は、高梨准一のお父さんに間違いはなかった。

口元に蓄えたシルバーな口髭さえなければ、高梨准一そのものである。

とてつもなく、良く似た親子で、誰が見ても一目瞭然の親子だった。


「こんなに綺麗なお嬢さんに、身の回りの世話をしてもらってるのかい、村越君?」

「英君は本当に気が利く。ホントに、いつも助かっているよ。」

「艶香さん、我が社に来ないかいそして私の秘書をしてくれないか?」


暫く、借りてきた猫のように黙って常務と高梨・父の話に耳を傾けながら、しきりとお冷を飲んでいた私は、口に含んだ水を思わず、吹き出しそうになりながら、目を見開いて高梨・父の顔を見た。

「冗談だよ。しかし、冗談と言いたいような言いたくないような、本当に随分な逸材を見つけたものだ。村越君、羨ましいね。」


…冗談にも程がある…。

一体、この親子はどうなってるんだと、大声で言ってやりたい位だ。

その心の内をなるべく見破られないように振る舞ってみる。

しかしながら、やはり顔に出てしまっていたのか、セレブ高梨は、少し半笑いで私を見ていた。

『貴方を見ていると飽きないですね。』

…いつぞや言われたあの言葉を思い出す。

今日もきっとそんな風に思っているに違いない。