「准一君、初めてではないはずだが…?」
常務が苦笑気味でセレブ高梨の顔を見上げる。
そうだ、そうだ!もっと言ってやって下さい、常務!
心の中でエールを送ってみる。
しかしながら、セレブ高梨は表情一つ変えずに、常務の顔を見て答えた。
「そうでしたね、何度かお会いしてます…ね?英さん。」
…と、私の顔色を伺うような眼差しで、見つめられる。
「ええ、まぁ…。何度か…。」
「おお、そうか!じゃあ、本当に構えずに気楽にしてくれていいよ、英君。」
急に上機嫌になったのは常務だけで、この状況を楽しんでるのはセレブ高梨で、私はというと、なんだか、罠にはまってしまったような気になってきて、さっさとこの場から立ち去りたい気持ちで一杯になる。
一人、マイペースに受け取ったおしぼりで顔を覆っているセレブ高梨のお父上(と、おぼしき人間)は、顔を覆った後も全く周りの様子など気にせずに、胡坐をかきニコニコと私の顔を見ていた。
「随分と可愛らしい御嬢さんだね、村越くん。どちらの御嬢さんかな?」
「そうか、高梨君にはまだ紹介してなかったな。私の秘書をしてもらってる英艶香君だ。」
「は、初めまして、英、艶香です…。」
常務に促され、背筋を伸ばし座り直すと、セレブ高梨のお父さん(と、おぼしき人間)に軽く頭を下げた。
「今日紹介するはずの御令嬢が急に体調を崩されて、何やら入院することになったそうでね…。」
…ええ、代役ですとも。
どこぞのご令嬢じゃなくて、大変申し訳ないですねっ!
と、心の中で呟いてみる。
そして、愛想笑いで微笑みを返した。
