私は言葉を探して一生懸命仕事モードの接し方を探すのだが、全く頭に浮かんで来ず、無言になって固まってしまった。
イマカラ、ワタシ、オミアイスルンデスカ…?
何で最初から言ってくれないのかなぁ…と、ほんの少しだけ常務への疑念を覚える。
だが、言われた所で常務からの申し出を拒否する権利は私にはあったのだろうか?
「間もなく到着致します。」
運転手さんが私たちに声を掛ける。
「承知しました…。」
「英君、そんなに身構えなくていい。気楽にしていいから。」
全く悪びれた様子もなく、私に笑いかける常務に、作り笑いで私は返す。
「ありがとう。」
常務が先に悠々と降り、続いて私も車から降りた。
その店の前に立ち、目をギュっとつぶる。
『瞬、ごめん。』…と、心の中で小さく呟く。
お見合いなんて…知らなかった。
到着した老舗の割烹料亭。
すり足でするすると歩く和装の女将の後を相変わらず悠々と歩く常務。
その後ろを小さな足音を立てて歩く私。
背筋を伸ばして歩いてなんか居られない。
「こちらのお席になります。」
「ありがとう。」
大きな池があり、その周りは美しい緑を湛えた紅葉等の木々と群青色のカキツバタが凛として咲き誇っている。
石灯篭の中は薄っすら濡れていて、緑色の蛙がひょっこりと顔を出し、チャポンと池に飛び込んだ。
絵に書いた様な、日本庭園。
シシオドシが時々カコンッと音を鳴らすが、どこで鳴って居るのかはここからは見えなかった。
