少しだけ間を開け、返事を躊躇っている私をタケルは不思議そうに見た。
「…あんまり乗り気じゃなさそうだな?」
前の私なら、きっと二言返事でOKと言えたはずだ。
「…焼肉…、食べる格好じゃ…ないし…。」
焦点を合わせる事なく、タケルを見て何とか適切な断り方をしたつもりだったが、どうやらタケルにとっては、ただの子供の我儘に過ぎないように捉えられてしまったらしい。
「わざわざ焼肉食べる格好をしてまで焼肉食べるヤツの顔が見たいもんだね~。今更なんだよ、デートでもあるまいし…。焼肉決定ね?」
…いつからタケルはこんな強引なヤツになったのか…とちょっと疑念を過らせ、更にはタケルの車に乗せてもらっている以上、これ以上の変な言い訳というか、我儘を言う訳には行かず、無言で頷いた。
相変わらず雨は容赦なく降り続け、更には雷も伴って激しく降り続けていた。
国道沿いの焼肉屋に駐車し車から降りると、2人で一気に走り出し、店の中に入った。
時間がまだ早かったせいか、店内は小気味よい音楽と激しく屋根を叩きつける雨音が響いている。
窓際の席を案内され、タケルと向かい合うようにして座った。
タケルは3人前分のお肉の盛り合わせとライスを注文した。
「艶香は?」
「じゃ、Aセットで。」
「かしこまりました。」
やっとの事で、落ち着く事が出来る空間。
里奈に悪いと思いながらもタケルの顔を見る。
「…タケルには、嘘つけないのかな、わたし…。」
「…ん?」
