「同じ空の下で…」


前を見据えたままの瞬の顔を時折、横目で見ながら、瞬の助手席で、小さく溜息をつく。

さっきまでの落ち着かなかった鼓動と乱れかけた呼吸を調えるかのように、深呼吸する。

ナビの灯りと時折、私と瞬の手元を照らす月明かりは私達を寂しげな雰囲気に包んでいった。


無言で私のアパートまでの道を運転する、瞬。

表情一つ変えずに居る。

私の右手は瞬の左手をずっと離せずに居た。


「…今日、パスポートを受け取ってきたんだ。」

6個めの信号に差し掛かった時、やっと瞬が口を開いた。


「…そうなんだ。いよいよ…なんだね。」

「…まぁ…ね。」



会話が途切れる。


そして、また、瞬は車を走らせた。


「…あと、日本に居れるのも…3週間か…。」

「…うん。」


その時間のうちの、どのくらいの時間を…

瞬と一緒に過ごせる事が出来るのだろう。




「タケルが、激励会しようってさ。」

「…うん。」

「…いつがいいと思う?」

「…瞬が…忙しくない時が一番いいんじゃない?」


そっと瞬の顔を覗き込めば、どこか寂しそうな顔をしていた。

その顔は、いつか見たあの表情に似ていて、私は慌てて瞬から視線を逸らした。