私は、その場にうずくまったまま、暫く動けずに居た。
頭を伏せたまま、うずくまってると、駅員さんに声をかけられる。
「お客さん、大丈夫ですか?」
明らかに酔っぱらって具合を悪くした人と勘違いされたらしい。
「…あ、す、すいません。大丈夫です…」
急いで立ち上がり、まだ少し震える膝に気付かれないようにして歩き出すと、約束の場所に向かった。
何度も何度も頬を抑え、足も無駄に大きく曲げて、震えを抑えようと大振りな動作でその場に向かった。
待ち合わせ場所には、同じように待ち合わせてる人が何人か居た。
間をしのぐ為にスマホを取り出すと同時に着信音が鳴る。
吉田君からだった。
『艶香さん?今、何処ですか?…戻って来ないから…』
「ご、ごめん、帰るね。今駅に着いた所なの…。」
『あ、そうだったんですか!具合悪くしたままトイレに籠ったのかと…解りました。気を付けて帰って下さい。』
「…うん。ありがとう。」
『また月曜!』
声がよく通る吉田君は、そのまま電話を切った。
辺りは車のエンジン音や駅のアナウンスの声や人の話し声が聞こえて、やっと周りの景色もまともに見えた気がして。
やっと、さっきの変な緊張感にまみれていた自分から解放された気がした。
足も、自然に震えが止まっていた。
