「同じ空の下で…」


その場に取り残された私はと言うと…

「つやかさん、ゲット~!」

とか

「行きますよ!歌いますよ!はじけますよ!」

とか…



私の意思はお構いなしとでも言うかのように、主任の部下や新人に拉致されるかのような体勢…いわゆる、左腕と右腕を捕まれて『捕えられた宇宙人』みたいな…あわよくば、そのまま両足が宙に浮きそうな勢いで、拉致されかけながら二次会に強制的に連行された。

「…ちょっ、ちょっと…あたし…帰ります…ってば。」

伊藤主任を筆頭に、高橋、吉田、新人西山…他etc.は、周りを気にする事なく大声で歌いながら歩く為、私の声なんて誰一人、気づいて貰えない。

ため息をつき、その恥ずかしい集団に捕獲され、仕方なく二次会の場所へと向かった。

…適当に、逃げ出そう!

そう覚悟した。



カラオケルームのある居酒屋におよそ8人がほぼ寿司詰め状態で座る。

隣との距離なんてない。

ほぼ密着に近く、部屋の中の空気は酸欠になりそうな位息苦しさを感じる。


「英、まずなんか歌って場を盛り上げてくれ!」

大きな声で言う、自分の向こう側に居る伊藤主任は、ひとりだけ大きくその場を陣取り、ゆったりと座りながら私へマイクを渡してきた。

「…伊藤さん~…、勘弁してくださいよぉ…。」