「同じ空の下で…」


「…そうですか?」

私は香織さんに笑顔を返す。


「私も、あんな風にしてお酒を注いで回らなくちゃいけないのかな…。」

「そんな事したら、次の飲み会からそれが当たり前になっちゃうでしょ?…それが嫌だから、私はやらないけど?」

「ああ、なるほど!」

総務課の他の女子社員の2人は、さっきの新人と同じように、課内の人の席を廻っては、お酒を注いで回ってる。

「…でも、課長ぐらいには、行っておいてもいいかもね。」

「あ、じゃ、行ってきます…。」


席を立つと近くのテーブルにある瓶ビールを持ち、課長の居るテーブルへと向かった。



そんな事を余計に考えなきゃいけないから、会社の飲み会なんて…楽しく酔えるような飲み会じゃない。


無論、労務の主任とかは飲み会開始から30分くらいでスグに出来上がってしまっていて、大袈裟な身振り手振り、そして大きな声で話をしては笑い声をその一室に響かせていた。


課長との雑談を終えて席に戻って時間を見るフリをしながら、スマホの画面を覗き込む。


メールの受信を知らせるランプを確認して、すぐに画面を開いてメールを確認すると、瞬からのメールが届いていた。

グッドタイミング、瞬っ!


すかさず私はトイレに立つフリをして、バッグを抱えて部屋の外に出る。


[Text:電話、してもいい?]




なんだよ、今更。

いつも時間もこちらの都合もお構いなしに電話してくる癖に…。

私はほんの少しだけ笑った。