皆を見送っていると、背後から強い力で体を抱きしめられる。
首元にかかる吐息がいつもより熱い。
肩を大きく上下させ、息切れしているのが私の身体にも伝わってくる。
「お疲れさま…。」
私の体を抱く主に涙声でそう言うと、汗にまみれて懐かしい香りが鼻をかすめた。
抱きとめられたまま、クルリと向きを変え、少し背伸びをして、彼の首に腕を回し、ありったけの力で彼を強く抱き返す。
「…最高でした…。」
震える声でそう言いながら、静かにインカムを外し、目尻に涙を湛えながら、私は彼の唇を探し当てると自分の唇を重ねる。
それに応える彼の唇の温度は、いつも以上に熱かった。
「やべぇ…マジ泣きそう…。」
唇が離れると、衣裳の帽子で目元を隠すようにして、その主はその場から急いで居なくなった。
静かにその逆三角形の背中を見送る。
「瞬、かっこ良すぎ…。」
一人呟くと、ハンカチを取出して自分の涙を拭った。
浸る時間すらも無く、さっき外したインカムをまた、あてがうとすかさず指示が入ってきた。
『つやか、控室の方の手伝いお願いします』
『はい。了解しました。』
タケルからの指示を受け、急いで控室に入り、飲み物を配る手伝いをする。
その作業をしながら、瞬の姿を探したけど、すぐに見つける事は出来なかった。
