「同じ空の下で…」


外の空気の心地よさを体全体で感じながら、ベランダで暫く外を眺める。

控え目に咲き誇る桜の蕾を眺めながら、大きく息を吸い込む。


「…いよいよだね。」


「…ヤバい、緊張してきた。」


外の景色を静かに眺める瞬からは、全然緊張の様子など伺えない。


「…ミスらないように、しないとね…。」


「…うん、お互いに…。」


「…あたしは、裏方だから、全然余裕だけど?」


「…そうやってプレッシャーかけるな!」


瞬に優しく笑いかけると、右の口角と右の眉をあげて、瞬は困ったように笑い返した。


「…さぁて、遅れないように支度しないと。」


伸びをして、頬を軽く叩き自らに気合いを入れると、部屋の中に入った。


フレンチトーストの香ばしい香りが部屋中に拡がる。


お互いに自分の支度を済ませると、一緒に部屋を後にして、瞬の車で事務所に向かった。

事務所には既に大勢の同級生たちが、それぞれ忙しそうに動いている。


【当日!!気合いいれろよ、お前ら!】


瞬が描いたであろう、あのカウントの最終ページが事務所に大きく掲げられていた。



「おはよう、艶香!」


声を掛けられ、タケルの顔を見返すと、今までにない位の満面の笑顔。



「おはよう!いよいよだね!」


「今日は宜しく!」