こんな風に瞬に抱きとめられ、
発せられる言葉に幸福を感じてしまう私は
また、叶うはずもない願いを巡らせてしまう。
『このまま時間が止まってくれないかな…』
時計を贈っておきながらも、時が止まる事を強く願った。
このまま時間が止まれば、瞬にそんな時計など必要ないのに…。
「大事にする。この時計も…艶香の事も…」
「…貴重品なんだから。取扱いには充分注意が必要なんだよ?」
「…そうだな…どっちも、壊れやすいもんな…。」
瞬の胸から解放され、彼の瞳に自分の姿が映る時…。
それは、間もなく瞬の唇の温度と自分の唇の温度が重なる時でもある。
そして、私は目を閉じる…───。
キスの数だけ、私は切なくなっていく。
充分過ぎる無数のキスを与えられて離ればなれになる事よりも、
1回のキスでいつまでも一緒に居られたら。
そんなバカみたいな事を思いながら、瞬と唇を重ねる。
好きになれば好きに成る程、
離れ離れになる現実を、素直に受け入れたくない自分がそこには居る。
